2013/01/04

Nepal-104: 数学コンテスト ①

10月中旬。
期末テストも終わり、学校は約一ヶ月の『ダサイン休み』に入った。
ビル・シュレンドラ・スリジャナの三人も村に帰ったので、ホステルには世話役のサビナが一人で残っている。
彼女の大学の試験が、ストか何かの影響で休み期間にずれ込んだためだ。

さて、長期休暇に入り、本来ならヒマになるはずのこの時期だが、今回は少し違っていた。
というのも、この期間を利用して、ポカラで『数学コンテスト』を開催することになったからだ。

主催するのは、アジア教育交流研究機構(略してAAEEという団体だ。
私の知り合いが代表を務めるこの団体は、アジア各国の学生や教育者の交流を通して、アジア全体の教育を発展ようという理念の元に活動している。
しかし、このAAEEはまだ出来たばかりなので、団体としても非常に小さく、知名度も無に等しい。
そこで団体の知名度を上げるために、ここポカラで一つ派手なイベントを催そうという話になり、私が以前から温めていた『数学コンテスト』の計画が陽の目を浴びることになったのだ。

SG小学校で算数を教え始めてから、私はネパールの数学教育が見せかけだけの暗記モノにしか過ぎない事に気がついた。
教科書には基礎的な問題だけしか載ってなく、頭で考える必要が全く無いのだ。
教科書に書いてある公式や解き方を丸暗記し、与えられた何のヒネリもない問題を解いた所で思考能力は身につかない。
私は、ネパールの私立校の生徒に日本の問題を与え、どれくらい出来るか見てみたいと思うようになった。
そして、その結果を広く知らしめることで、ネパールの教育に刺激を与えられれば、と考えたのである。

とりあえず考えたコンテストの概要は、以下の通りだ。
・参加者は8年生の生徒
・一つの学校から34名参加できる
・形式は筆記テスト
・問題は主に日本の小6から中2のレベルで、英文で出題される
・計算や基礎問題が中心の第一ラウンドと、応用問題が中心の第二ラウンドの二部構成
・参加費は無料だが、事前に申し込みが必要
・結果は新聞などで発表する
・上位3名には賞金を出す

まず今回、8年生に限定した理由は、初めての試みなのであまり大規模にしない方がいいだろう、という思いからだ。
ちなみに、ネパールでは8年生が中学で一番上の学年で、また、他の国際学力テストもおおむねこの学年の生徒を対象に行われている。
テスト問題は、日本のドリルや問題集から適当なのを見繕って、私が自分で英文に翻訳して作ることにした。(ネパールの私立校の教科書は英語で書かれている)
果たしてまともに作れるかどうか不安はあるが、他にやってくれる人が居ない以上、何とか自力でやるしかあるまい。

問題のレベルは、第一ラウンドが中学13年の計算や基礎的な問題で、第二ラウンドが主に小学6年~中学2年の応用問題だ。
問題を選ぶにあたっては、ネパールの8年生の教科書もチェックして、問題を解くのに必要な公式・基礎知識を彼らが習っているかも確認しなければならない。

コンテストの招待状も自分で作ることにした。
幸い、新聞やラジオなどにもコネがあるので、コンテストの告知や結果発表にも問題は無いだろう。
賞金に関しては、AAEEに資金力が皆無なので、私が自腹で出すことにした。
‥‥とは言っても、一位が五千円で、二位と三位を合わせても一万円程度でしかない。
それでもネパールの中流家庭の月収の半分くらいにはなるので、賞金額としては十分だろう。

問題は私の滞在期間がビザの関係で、あと一ヶ月ほどしか残されていないことだ。
スケジュール的にはギリギリである。
こうして、のらりくらり生きてきた私にとって、今までに経験したことが無いほどクソ忙しい日々が始まった。

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