2013/11/25

戦後の終わり

中国が尖閣諸島を含む海域に新たな防空識別圏を設定した、とニュースになった。
これによって、いよいよ武力衝突、そして、戦争という最悪の事態が決してあり得ない話では無くなってきた。
だが、まだほとんどの日本人は、そこまで事態は悪化しないだろうと考えているように思う。


武力衝突――――そんなもの、中国は今までに幾度もやって来ている。
チベットやウイグルを見ればいい。インドとの国境付近でも銃火を交えている。
武力衝突が即、全面戦争となる訳ではない。大抵はどこかしらの落とし所に収まるものだ。中国はそれを経験で知っている。だから、漁船で布石をうち、湾岸警備隊の艦艇や空軍の偵察機で挑発し、さらに今回の防空識別圏の設定をして、徐々に日本に詰めてきているのだ。全ては、持ち札の一枚一枚なのだ。元来、商売上手の中国人にとって、駆け引きは十八番なのである。


個人的に、遅かれ早かれ中国軍機が自衛隊機に発砲してくる可能性は高いと思う。彼らも出来れば、自衛隊に先に発砲させたいだろうが、自衛隊員は「絶対にこちらから発砲するな」と厳命されているに違いないから、そうはなるまい。結局、睨み合いの緊張が極限まで高まった時、中国側から発砲してくるだろう。それで全面戦争にはならないと分かっているからだ。
アメリカは極めて厳しく中国を批難するだろうが、かと言って、決定的に敵対するとも思えない。中国最大の貿易相手国であるアメリカに、そう簡単に両国の関係を断ち切ることは出来ないからだ。なればこそ、自衛隊はまず自力で自分の身を守らなければならない。だが、果たして自衛隊は撃ち返すことが出来るだろうか。
もちろん、自衛隊の隊員たちには撃つ覚悟も撃たれる覚悟もできているだろう。彼らの勇敢さと義心には疑いを挟む余地は無い。しかし、政府はどうだろうか。中国にとっては、日本政府の考える最悪の事態=武力衝突ですら、様子見の一手にしか過ぎないだろう。国際社会から批難されても、どうとでも収められるという自信があるからだ。それぐらい中国の経済力は世界中に浸透している。もし、日本が態度を変えなければ、打つ手を少しずつ強めていくだけだ。
だが、日本は戦後以降、一度も武力衝突を経験した事がない。いくら自衛隊が厳しい訓練で研ぎ澄まされた刀だとしても、いざという時に抜けないのでは意味が無い。「攻撃すればこっちも攻撃される」という前提があって初めて、軍は戦争の抑止力になり得る。持ち札が無い状態で、駆け引きなど出来はしないのだ。
今、中国に対して、日本人の八割が不信感を持っているらしい。反中感情は、これまでになく高まっていると言っていいだろう。しかし、それと日本が戦争を出来るか否かは、全くの別問題だ。戦争アレルギーの上に平和ボケした日本人が、目先の安寧よりも義を選ぶだろうか。選べるだろうか。
戦わないのならそれでもいい。正しいと思うことを貫き通して戦火に巻かれるより、たとえ色々なものを奪われても平和を望むというなら、それも一つの在り方だろう。尖閣諸島などくれてやればいい。あるいは、沖縄まで奪われるかもしれないが、いや最悪、日本という国が中国に飲み込まれてしまうかもしれないが、戦わないというのはそういう事だ。
中国がいずれ自制して、どこかで留まると期待するのは、あまりにも楽観的過ぎる。もはや中国共産党は、人民どころか己をコントロールすることも出来なくなっているのではないだろうか。国民と軍部が一緒になってリスキーシフトで暴走し、太平洋戦争に突入していった日本帝国と同じようなことが今、中国で起こりつつあるのではないだろうか。
理不尽が自分たちの身に降りかからないと思うのは間違いだ。危機はいつだって突然やって来る。その時になってパニクっても遅いのである。

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