2016/11/09

米大統領選と民主主義の限界

 今日、いよいよアメリカ大統領選の投開票が行われる。これまでもそうだったように、世界で最も影響力を持つアメリカ大統領の選挙は、アメリカ国内だけでなく世界全体の今後を方向付ける重要なものとなるだろう。ただ、今回の大統領選はこれまでのものとは大分異なり、混沌とした様相を呈している。
 その台風の目となっているのは言わずもがな、共和党の大統領候補ドナルド・トランプという存在である。彼自身の大統領としての適正や資質はともかくとして、ひとつハッキリしているのは、彼の言葉や態度に驚くほど多くの人々が共感しているという事実だ。
 トランプの大統領選のスローガンは『Make America Great Again』であるが、この『America』とは要するに『白人』のことである。あるいは、『白人中心のアメリカ』と言い換えてもいい。つまり、自由競争に敗れ、下流階級に落ちぶれた白人が、自分たちの自信を取り戻してくれそうなドナルド・トランプに、こぞって期待を寄せているのである。そこからは第一次世界大戦の敗戦、およびそれによって課せられた莫大な賠償金と様々な制約によって、失意のどん底を這いずっていたドイツ人が、圧倒的なカリスマを備えたヒトラーに魅了されていったのと同じ構図が見られる。